頭痛の種類・診断
今まで、頭痛を経験したことがある方は多いかと思います。頭痛と言っても、痛みの場所や痛み方、頻度や持続時間、痛むきっかけ、頭痛以外の症状の有無などは様々です。まず自分の頭痛の状態を把握することは大事なことです。
頭痛には大きく分けて2つのタイプがあります。命に関わらないが日常生活に支障がある辛い頭痛「一次性頭痛」、と命に関わる可能性がある怖い頭痛「二次性頭痛」です。
一次性頭痛
明らかな基礎疾患や病変はみられないものの、症状が頻繁に起こり、生活に支障をきたしたり、痛みが頻繁なためストレスに感じたりする頭痛です。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、神経痛などが一次性頭痛に当てはまります。仕事・家事・勉強などに集中できず、生活に少しでも支障を感じている方はご相談ください。
片頭痛
これまでに何度か同じような頭痛を繰り返す方は片頭痛の可能性があります。
- ズキンズキンと脈を打つような痛み
- 痛みは数時間から長くても3日程度で治まる
- 頭痛と一緒に吐き気がしたり、吐いたこともある
- 日常生活に伴う動作で痛みがひどくなる
- 頭痛発作中に普段より光がまぶしく感じたり、まわりの音がうるさく感じたりする
- 頭痛が起こる前に視界がチカチカしたり物が見えにくくなる
片頭痛はその病名が示すように片側性と思われがちですが、約4割の方が両側性といわれています。また多くの片頭痛はズキンズキンと痛む(拍動性)いわれてきましたが、ズキンズキンしない(非拍動性)場合もあります。特徴的なことに、日常的な動作により頭痛が悪化することが挙げられ、そのため生活が支障されます。
また片頭痛の7割は女性ホルモンの変動が関与しているといわれており、20-40代の女性に多いのも特徴です。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は最も一般的で日本人に多い頭痛です。長時間同じ姿勢で仕事をした時などに筋肉や神経が緊張して起こります。多くの方が一度は経験したことのある頭痛ですが、精神的・身体的ストレスが原因で慢性化してしまうことがあります。数日にわたり頭全体や後頭部がギューッと締め付けられるたり、重く感じたりする頭痛が続きます。
群発頭痛
群発頭痛は、ある一定の期間(約1か月間)毎日のように睡眠中に決まった時間に起こる片目をえぐられるような激しい痛みです。"世界三大激痛"と呼ばれるほどの痛みですが、3時間以内に自然に治まります。しかし、睡眠中に激しい痛みが起こるため、眠ることに恐怖を感じている方も少なくありません。
群発頭痛の特徴は、痛みと同じ側で涙が出たり、眼が充血したり、まぶたがはれたり、鼻水・鼻づまりなどの症状を伴います。片頭痛が女性に多いのとは対照的に群発頭痛は20-30代の若い男性に多いのも特徴です。
二次性頭痛
二次性頭痛は、頭頸部に何らかの原因疾患がある頭痛を指します。頭を強く打ったり、脳の血管が切れたりすることが原因で起こることがあり、早急な対処が必要になります。おもな原因疾患に、くも膜下出血、動脈解離、脳腫瘍、髄膜炎などが挙げられます。
- 今まで経験したことがないような激しい頭痛
- 頻度と痛みがひどくなる頭痛
- 片側の手足に力が入らない、しびれる
- 呂律が回らない、言葉が出ない
- 物が二重にみえる
- 高熱がある
最悪の場合は命に関わったり、後遺症を残したりする可能性があり、急に激しい頭痛に襲われたときは一刻も早い救急受診が必要です。
くも膜下出血
脳を覆っているくも膜の下で太い血管が破裂した状態です。経験したことがないような激しい頭痛を起こすことが多く、突然バットで殴られたような痛みと表現されます。吐き気や嘔吐、意識障害などをともなうことも多くなっています。命に関わる可能性が高い状態であり、命が助かっても深刻な後遺症を残してしまうケースが少なくありません。
くも膜下出血の約90%は、脳動脈瘤の破裂が原因です。すぐに適切な処置・治療を受けないと再破裂してさらに出血し、状態が悪化します。脳動脈瘤をMRI検査で早期に発見して破裂前に適切な治療を行うことで、くも膜下出血の予防につながります。
脳動脈解離
動脈の壁は3層構造で、内側から内膜・中幕・外膜で成り立っています。動脈解離は全身の動脈どこにでも起こる可能性がありますが、脳動脈では頸椎の中を走行する椎骨動脈(おもに脳の後ろを栄養する血管)に起こることが多いです。血管が解離することにより、脳梗塞の原因になったり、解離性脳動脈瘤となりくも膜下出血の原因となることがあります。
椎骨動脈解離は、動脈硬化などの危険因子を持たない比較的若年者に多く(40歳前後)、男性に多くみられる傾向にあります。原因不明のこともありますが、カイロプラクティックや頸部の捻転を伴うスポーツや頸部の外傷が契機になることもあります。
脳腫瘍
脳に腫瘍ができ徐々に大きくなることで、頭のなかの圧力が高くなり頭痛が出現します。早朝や起床時に頭痛が出やすいと言われています。腫瘍のできた場所によって、手足の使いづらさ、しゃべりづらさ、時にけいれんなどの症状を伴うことがあります。
髄膜炎
頭蓋骨と脳の間には髄膜という膜があります。その膜に細菌やウイルス、結核菌、真菌(カビ)などが感染し、炎症を起こした状態です。比較的、小児に多い病気ですが、どの年代でもおこる可能性があり70歳以降で増加傾向にあります。頭痛に加え、発熱、頚の硬直が特徴的な症状です。髄膜炎の中でも、細菌感染による細菌性髄膜炎は死亡率が高く、治癒したとしても後遺症が残りやすいといわれています。成人の細菌性髄膜炎の中でもっとも多い原因菌は肺炎球菌です。肺炎球菌ワクチンによる予防接種が可能です。
その他、眼科・耳鼻咽喉科に関連する疾患による頭痛
- 急性緑内障発作
- 副鼻腔炎
- 蓄膿症 など
国際頭痛分類で、頭痛は300種類以上に分けられています。ここに記載してある物はほんの一部です。
頭痛の原因を明らかにして、
コントロールしていく治療・予防
頭痛は痛みですから、鎮痛薬には一定の効果はあります。しかし痛みは不快なものなので、ついつい決められた用量以上の鎮痛薬を飲んでしまったり、毎日繰り返し鎮痛薬を飲んでしまうことは危険です。かえって頭痛がこじれて、毎日のように頭痛が起こる、薬物乱用頭痛になる可能性があります。
頭痛の原因は様々です。頭痛の原因を明らかにして、頭痛の原因に合った治療を受けることが、頭痛コントロールには必要です。
薬物乱用頭痛とは
薬物乱用頭痛は二次性頭痛に分類され、頭痛薬を飲む回数が増えて、そのことで頭痛の症状が悪化・慢性化してしまっている状態で、薬の使用過多による頭痛です。頭痛薬を常用していると脳が痛みに過敏になり、ちょっとした刺激で強い痛みを感じるようになります。
結果的に頭痛が起こる回数が増えて痛みも強くなり、症状を悪化させます。薬によるものということを知らずにいると、頭痛薬を飲む頻度が増えてさらに頭痛が悪化して、薬の効果もさらに薄くなります。
- 薬の量が増え、だんだん効かなくなってくる
- 頭痛の回数が次第に増え、毎日起こるようになってくる
- 早朝から頭痛がある
このような症状があれば薬物乱用頭痛を起こしている可能性があります。
頭痛の元に沿った診療
一次性頭痛であれば、睡眠不足や過度な疲れ・ストレス、パソコンやスマートフォン、ゲーム機などの長時間使用、運動不足などは、頭痛の原因になる要素です。
生活習慣の見直しと共に、必要であれば原因に沿った薬も検討します。連日続くような緊張型頭痛であれば筋肉の緊張を和らげるような薬、片頭痛であれば片頭痛用の治療薬であるトリプタン製剤も有効です。片頭痛発作の回数が多い方には予防薬が有効な場合もあります。2021年には新たに飲み薬でなく注射の予防薬も保険適応され、副作用が少なく高い効果が期待されています。
鎮痛薬と予防薬の正しい使用方法・服用のタイミング
頭痛薬は服薬するタイミングによって効果に差が出るものもあります。
また漫然と服薬していたり、痛みが出る前に服薬しておこう、などを繰り返していると、薬物乱用頭痛に陥る可能性があります。一度、薬物乱用頭痛の状態になると、治療が難しくなるケースもあります。脳の過敏状態を改善する方法を検討しながら、鎮痛薬の減量・中止を試みていきましょう。
頭痛でお悩みの患者さんへ
少しでも不安なことがあれば、お気軽にご相談ください
- 慢性的な一次性頭痛でお悩みの方
- もしかして、二次性頭痛かもとご心配な方
どちらの頭痛も痛みというのはつらいものです。自分の頭痛の原因が知りたい、頭痛の回数を減らしたい、最近頭痛薬を飲む回数が増えてきた、などありましたら、お気軽にご相談ください。